レオ
久しぶりにこの土地を訪れた。
30年前に、ぼくの両親が住んでいた土地。
レオという名前の白い犬を飼っていた土地。
ぼくが帰省すると彼は喜んで跳びついてきた。
いや、見知らぬ人が来ても彼は必ず喜んで跳びついてきた。
番犬としては全く向かない犬だった。
彼が歓迎したのは人だけではない。
彼が餌を食べているとき、すずめが近くへ飛んで来ると、彼は静かに犬小屋に入って、すずめが自分の餌を食べる姿を微笑むような目で眺めていた。
レオは散歩に連れて行くと、自由に走ることを好んだ。
紐を放してやると、ぼくより先を走って、振り返ってはぼくが来るのを待った。
そんなときも彼の顔は微笑んでいるように見えた。
ぼくが追いつこうとすると、また先へ走っていった。
いつか事故に遭うんじゃないかと気が気でないぼくは、その後、ひどく彼を叩いた。
レオは2歳半で病気で亡くなった。
話すことができない動物は、実はぼくよりもずっと崇高な精神を持っているんじゃないか、と思うことがある。
それはぼくがレオを思い出すからだ、と思う。
それを苦い後悔の念とともに思う。
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