映画 きっとここが帰る場所
何かが変だ。主人公はそう言い続ける。
主人公は、とうの昔に引退したロックミュージシャンで、豪邸に住み、メイクだけは昔のままで過ごしている。
主人公の父親の葬儀で、主人公は30年ぶりに実家へ戻り、ホロコーストを生き延びた父が自分を辱めたナチスのSS隊員を執拗に探し続けていたことを知る。
この展開はとても唐突で、宙に浮いたような生活にいきなり現実を突きつけられるような不思議さがある。
SS隊員を探し出す決心をし、とうとうSS隊員を追い詰めた主人公は、最後に父がどうしても許せなかったことが、けしかけられた犬に怯えて小便をもらした父をそのSS隊員が大声で笑ったという事実だったことを聴かされる。
傍から見れば、そんなありふれた出来事に父が一生こだわり続けた、という事実に、何かが変だ、という主人公の人生に対する疑問は解消される。
執拗な強い思い、これが足りないのだ、と。
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