藪の中
蔓を採りに藪の中へ分け入った。
これほど深い藪の中へ入るのは、初めてのことだ。
林道から数メートルしか入っていないのに、もう道がどの方向にあるか分からない。
あけびの蔓を絡まった立木からほどく作業を始める。複雑に絡まり合う蔓は簡単にはほどけない。ときおり、鎌で切断しながら、ほどいていく。
混沌から秩序を取り出す作業を延々と続けるうちに、外界は意識から遠ざかり、いつまでもこうしていたい、という欲求が湧く。
「どうですか?」
藪の向こうで作業している人の大きな声で、ぼくは我に返った。
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