ユーコン河
極寒の地方を流れる川は、ぼくらの知る川とは著しく異なるだろう。
20年以上前に訪れたアラスカのほぼ中央を横切るユーコン河のことを考えている。
とはいえ、ぼくの知っているユーコン河は2月から3月の、カチカチに凍りついた川の上に雪が積もって、点々と位置する沿岸の村同士をスノーモービルで行き来するための道の役割を果たしている頃のみにすぎない。
スティーブンスビレッジの友達トムは、この川のことを眼を輝かせながらぼくに語ってくれた。
「氷が解けると、一面が緑の世界に変わる。生き物たちがみんな目を覚ましてにぎやかになる。ぼくらは船を出して、キングサーモンをたくさん捕まえて、一年分のお金を稼ぐ。今よりずっと楽しいぞ~。その頃、またおいでよ。」
短い夏は、それだけに濃密な夏であるらしい。虫たちの勢いもすごい、と聞く。
そして、10月ごろになると、また上流から氷が流れ始め、そのうちにものすごい音を立て始めるという。氷と氷がぶつかり合う音だ。ときには沿岸を上ってきて、家を潰す氷もあるらしい。
静かになった頃には、また極寒の白い風景へ戻ってくる。
ユーコン河は、その沿岸に住む人々の生活のすべてだ。恵みをもたらし、同時に、災いをもたらす。
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