予算と素材
プロジェクトの予算は多いに越したことはない。
ただ、予算が十分な場合、クライアントの要求がぼくを困らせることがある。
たとえば、こんなときだ。
大理石張りの空間イメージをクライアントが欲しい、と思っているとする。
ぼくらは、カスタマーの心に響く世界に一つの空間をつくりたい、と常に思っているから、クライアントのめざす空間を、例えば、大理石を使わない空間に「変換」して実現する方法を考える。
そこにぼくらの真骨頂がある。
大理石張りの空間の本質を見い出そうとするのだ。
だが、予算が十分な場合は、そのまんま大理石を張ることが要求されることがある。
予算が十分でなければ、実現したであろう創造が、逆にかなえられないことになってしまう。
ぼくらのことだけをいっているわけではないのを前提として、創造力が活かされないことは、社会にとっての損失だと思う。
別に高級な素材を敵視するつもりはないが、それに予算を注ぎ込むより、創造力に予算を注ぎ込んだ方が、はるかに社会貢献につながる。
ぼくはそう信じている。
→自社ファクトリーでつくる店舗デザイン空間/グリッドフレーム