GF001のコンセプトノート

店舗内装デザインを手がけるグリッドフレーム001の視点

距離

ある小説を好きという人は、実は小説の中に入り込むことなく、自分を安全地帯において、遠くの風景を眺めるが如く、それを読んだ人だったりする。 そして、その小説を嫌いという人は、小説の中に入り込んでしまい、そこに描かれる世界を…

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中央と周縁

ぼくには常に周縁にいたいという欲求がある。 周縁には、中央のシステムの規制が十分に行き届かないところがあり、システムの良い部分を選択的に受け入れられる自由があるからだ。 自分で会社を興すことになろうとは、全く希望も予想も…

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ハウツー

今までグリッドフレームについて書いてきたものを、まとめる機会があって、加筆修正を加えた。 改めて気付いたのは、ぼくはコンセプトについては書けるけれど、それを実践する方法については、淡白な文章をさらりと書く以外に能がない、…

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牝鹿

「ヘッドライトの中に入った牝鹿はヘッドライトの外に出ることを知らない。」(森敦『意味の変容』) 車から必死に逃げるが、ヘッドライトの外へ出ると、今度は暗闇を怖れるのか、すぐに舞い戻る、という。 生きることを求めて光に向か…

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本と創造力

すぐれた書物は、今より先へ続く道を探しながら書かれたものではないか、と思う。 つまり、はっきりとこういうことを書こうという結論を持って、その通りに書かれた文章からは、私にとって得られるものが少ない、と思う。 ときおり道を…

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欠点

  欠点が全く表面に出てこない人には、リアリティが感じられないように、何をつくるにしても、欠点を消し去ってしまってよいものにはならない。 そうならざるをえないことを、人は欠点と呼ぶことが多いが、それこそかけがえ…

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崖っぷち

友人が、海岸の崖っぷちにたくさんの観光客が立っている写真をfacebookに載せているのを見て、そこへ立つ自分を想像する。 たぶん間違いなく、平衡感覚を失って、ぼくは海へ吸い込まれるように落下する。 クラッとする感覚。こ…

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汚れることへの怖れ

  STUDIO COOCAの関根さんと5年ぶりにお会いした。 知的障害、精神障害と呼ばれる人々の社会進出への道を切り拓くために、さまざまな試みを続けてこられた方で、平塚で創作活動を行える場所としての福祉施設を…

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言葉の力

未来は必ず今よりもよくなる、と無条件に信じている人は今どれくらいいるのだろう? 生まれてからそろそろ半世紀を迎えようとしているぼくらの世代は、概して言えば右肩上がりを自明のことのように感じられる時代背景の中に生まれてきた…

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グリッドフレームの背後にあるもの

まず、「美しいものをつくりたい」という思いがありました。 ぼくの考えでは、美しいものには二つあります。それは、指一本触れてはならない美しさと、触れても価値を損なうことのない美しさ。つまり、「汚せない美」と「汚しうる美」。…

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サスティナビリティ

「持続可能な社会のために何が必要か」を人間の内面について考えるとき、それは「未来が人間にとって生きるに値する」という見通しだろう。 ぼくにとって、それは創造的でいられるかどうかにかかっている。だから、創造的でいられるため…

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ディズニーランド

『ディズニーランド的建築』という言葉は、20年前にアメリカの大学で建築を学んでいた頃、明らかに侮蔑的に用いられていた。 それは、ハリボテ造作物に向けて用いられていると同時に、閉じられたユートピア世界をつくりあげる思想にも…

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専業

ひとつの会社を成立させるには、時代が変わっても揺らぐことのない価値を提供できなければならない。 そのためには提供できる価値の種類を増やす、というのがひとつの選択肢だろうが、グリッドフレームは専業でいく。 「つくる」という…

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時間

未来に楽しみにしていたイベントが、現在になり、そして過去になる。 現在はジェットコースターのように駆け下りて、気がつくともうひとつの思い出なって遠ざかり始めている。ぼくは、それを淋しい気持ちでながめている。 ぼくらはこの…

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鉄は熱いうちに打て

現瞬間から未来ヘ向かって立ち、いかなるものからもその意味を取り去ることによって構造し、構造することによって意味を見いだすこと(森敦『意味の変容』)こそが、創造するという行為であるならば、その創造自体は瞬時に起こるだろう。…

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論理的思考

本当にぼくは、人に伝えたいことがあるのだろうか。 伝えたいことがあるべきだ、と考えているだけではないだろうか。 学生の頃、友人のN君は「自分の内側を全部表現できたら、ノーベル賞をもらえるよね」と言った。 ぼくはそのとき、…

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終わりのないもの

ぼくは、終わりのないものを相手にしているのかもしれない、と思う。 もし、そうだとすれば、ぼくは死ぬまで仕事を続けられる、ということだ。   →自社ファクトリーでつくる店舗デザイン空間/グリッドフレーム →店舗内…

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勢い

ぼくたちの仕事は、時間をかければよい空間ができる、というものではない。 つねに、ひねり出したアイディアが旬であることが重要で、それが創造性の連鎖を引き起こす条件だからだ。 「今、目の前にあるアイディアをかたちにしたい」と…

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意味の変容 2013.8

森敦「意味の変容」には、内部/外部という概念が出てくる。 外部の一点は内部の一点に実現される。そして、逆に、内部の一点は外部の一点に実現される。 内部と外部の境界は外部に属するがゆえに、内部は閉じていながら、同時に開いて…

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記憶力

記憶力がとてもよい人に出会った。 その人は、自分があることを考えるときに辿った思考回路をはっきりと覚えていて、その後、何度でも同じ回路を辿ることができるそうだ。 だから、事前に入念にシュミレーションする効果がとても大きい…

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うらぶれた場所

当然のことだが、新しいビルと古いビルとでは、同じスケルトンでも醸し出す空気が全く違う。 古いビルのスケルトンは、現在までの空間の歴史を引きずっている。ぼくに霊感があるわけではないが、過去からの声がたくさん折り重なって聞こ…

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「汚しうる美」への誤解

ぼくが「汚しうる美」という言葉を使い始めてから、20年目に入った。 創設時から、グリッドフレームの制作コンセプトとして「汚しうる美を空間の中に実現すること」を提唱してきた。 だが、「汚しうる美」という言葉は、現在も人々に…

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構成力

柄谷行人の「日本近代文学の起源」は、何かをつくる人間に「つくる」ということがどういうことなのか、を考えさせてくれる優れた本だと思う。もちろん、柄谷行人の本すべてが、そういう面をもっているけれども。 ぼくは、1992年にア…

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風景

「心の中の風景」ということがある。 まさに、風景とは見る人の心とつながっている。 ぼんやりと風景を眺める、という時間をぼくはなによりも好む。 だが、そんな自分に対して、次のような言葉が突き刺さる。 「周囲の外的なものに無…

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リテラル

リテラルliteral(字義通りの)という言葉は、メタフォリカルmetaphorical(隠喩的な)の反対語で、つまり、「そのまんまやんけ~」といわれるような表現に対して評される言葉だ。 すべての分野において、と言っても…

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愛想

愛想がよいのは、両親から受け継いでいる。 概ねそれは対人関係でポジティブに作用してきたと思うが、アーティスト的な方ほど愛想がよい人間に警戒感を持つ傾向があると思う。 そんな相手に対してぼくが褒めると、本心からではないので…

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逃れる

闇へ逃れるのか、闇から逃れるのか? ぼくらが闇を前にしたとき、どちらだってありうるだろう。 問題は、この矛盾した欲求が同時に湧き起こるときだ。 光へ逃れるのか、光から逃れるのか? と言っても、同じことだ。 かくして、ぼく…

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