店舗内装デザインを手がけるグリッドフレーム001の視点
サハラ砂漠の北限は、少年の家の庭まで迫っていた。 数年前まではオリーブの木がたくさん生えていたそうだが、そのときにはもう緑は数えるほどしか残っていなかった。 近くに流れていた水路は涸れ果てて、彼らの生活は砂…
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マラソンについて、どの本を読んでも、後半型がよい戦法だ、と書いてある。小出義男さんが書いた本には、35km地点でいちばん早く走るように前半を抑えるのがもっともよいタイムにつながる、とある。 ぼくはこれまで、いつも前半型で…
レイヤーの向こうにあるものは、少し見えにくくなった分だけ、現実感を失っている。 例えば、霧の中の人を見るとき、現実の音は消えたように感じられ、そして、輪郭がぼけた人の動きはスローモーションで見るような優雅さを呈するように…
闇市という言葉を聴くと、生命力という言葉が連想される。 実際に、どのようなものかは想像の中だけだが、決して嫌いではない響きがそこにある。 「戦後のどさくさ」と呼ばれる混沌の中で、法的手続きを経ることなく行われていた商行為…
例えば、本田宗一郎もそうではないかと思うのだが、創業者が実際に手を動かしている間に経営者も兼ねていると、そのときは大会社にはならない。 大きな組織ができるのは、経営に専念する人と、実務に専念する人が分かれた後だと思う。 …
「頭の中でずっとつくっていて、出てきたアイディアを温めようとしたらダメ。どんどん捨てる。そうすると、スランプがなくなった。」 1年に1000点以上の新しいものをつくり続けている方の言葉だ。 循環させること。これが、続ける…
1992年12月のイースタンブール。寒い日が続いていたのを思い出す。 棚の中にしまっていたフィルムにカビや埃がつく。写真もこうして古くなっていく。 そのことにむしろほっとしているぼくがいる。 なにか、ノイズによって、内に…
「やらされてる、と思ったら、もうダメ。さっと蓋をしちゃうの。」 これは何十年も作品をつくり続けている、有名なマルチクリエイターと呼ばれている人から出た言葉だ。 創造的であることにこだわる、というレベルではない。創造的でな…
ぼくは学生の頃、よく海外へひとり旅に出た。けれど、本当の意味での放浪はしたことがない。放浪とは、いつ帰るともわからない旅のことをいうのだろうから。帰りのチケットを持っている旅を放浪とは呼ばない。 きっと放浪はしたくないの…
六本木通り沿いのカフェの屋外席で打ち合わせ。 六本木通りを通る車のノイズをバックに、ちょうどよく会話の音量が被さる。 庇の下には植物の影が照らし出され、微風にゆらゆらと揺れている。 これも空間のノイズとして、ぼくらの世界…
圧倒される、という経験は、一生のうちに何度あるだろう? ぼくが最近圧倒されたのは、どんなことですか、と訊かれたら、すぐには答えられない。 感心することは多い。けれど、圧倒されることは少ない。 ぼくがつくるものも、人に感心…
「先」という言葉を時間を表すために使うと、とても混乱する。「先日」といえば、過去のことだし、「先に行きます」といえば、順番の手前側になるし、「もっと先の話です」といえば、未来になる。 こんな混乱するような言葉が使われてい…
ニューヨーク州バッファローで建築を学んでいたときに、工場の爆破による解体(1995年)を見に行ったときの写真を、 http://gfdesign001.com (毎日のブログからの抜粋) のタイトルに使っている。 数百メ…
子供と映画館で観て、「ああ、フランス的だな」と心の中でつぶやいたミニスキュル。 その後、しばらく忘れていたのだが、ぼくの中で何かが引っかかっていたらしい。 何かがモヤモヤして、何気ない時間を過ごす中で映像が突然湧いてくる…
ポロポロと音を鳴らしながら、鍵盤がつぎつぎと雨のように壊れ落ちていく。 連続していた音は途中で抜け落ち、さらに切断され、やがてまばらになり、最後には音自体が失われてゆく・・・。 朽ちていくものの美しさを、音に変換するとき…
ソクラテスがこだわったのは、一対一の関係性である。 アゴラ(広場)で外国人・女性・奴隷に対して、一人ずつに向かい合って問答し、各人が公人でも私人でもない自己であることの自覚を促した。 ソクラテスの問答法は、相手を自己撞着…
2009年。 「見て。あのピエロの顔。あんなに愉しそうに笑ってる。あんなに愉しそうにしている人が落ちるわけないじゃない。落ちたって、きっと怪我なんてしないわ。」 空中ブランコのピエロを見上げながら、美しい母が言う。 何が…