闇市
実際に、どのようなものかは想像の中だけだが、決して嫌いではない響きがそこにある。
「戦後のどさくさ」と呼ばれる混沌の中で、法的手続きを経ることなく行われていた商行為は、知恵と力のぶつかり合いの中で成立したのだろう。
ぼくがその頃を生きたならば、どんな生活ぶりだったろう、と考えると、とてもその時代に向いているとは言いがたいが、それでも何かに熱中したにちがいない、と想像できる。
それでとんでもなく貧乏になったかもしれないが、そんな時代にタイムスリップできたならぜひ行ってみたい。
闇市の雰囲気を未だに感じさせる場所は、まだちらほら残っている。だが、危険だとか何とか言われて、完全に消えてしまうのは時間の問題だろう。
わざわざそこへ行って飲みたいとは思わないが、なくなったらなくなったで寂しさを感じてしまう。
きっと眠っている自分を、そこで見つけ出せるような気がするからだろう。
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