GF001のコンセプトノート

店舗内装デザインを手がけるグリッドフレーム001の視点

イソノミア

完成しないがゆえに、常に誰かに次の行動を促し、発展していくのではなく、変遷していく。

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森一郎氏による柄谷行人『哲学の起源』に対する書評に次のようにある。

イソノミアとは「無支配」、つまり支配することにも支配されることにも重きを置かない政治体制である。とりわけ、支配することを好まない点に特徴がある。誰かに支配されることは願い下げだ、と思う人は多い。支配されるのは隷属すること、すなわち自由の否定だからである。これに対して、その逆の、誰かを支配することのほうは、悪い気はしないというか、望ましいと思う人もいる。しかしながら、支配するとは、対等な関係で張り合う可能性を奪われることでもあり、それを面白くないと感ずるタイプの人間もいる。イソノミアとは、そのように、支配されることと同じく、支配することもよしとしない、自由を愛する者たちが共同で築く、対等な遊動空間のことなのである。

イソノミアをイソノミアたらしめるのは、公共の事柄に同等に参加し合う自由であり、それを通じておのれの存在を現わし合うことの喜びである。この場合の「自由」とは、貧富の格差の解消でも拘束からの解放でもなく、人々と共に事を為し「新しく始めること」においてはじめて明け開かれる「透き間」のことを意味する。

これこそ、ぼくがグリッドフレームの空間づくりを通して、広げていきたいと考える「創造性の連鎖」の本質かもしれない。

貧富の格差の解消でも拘束からの解放でもなく、人々と共に事を為し「新しく始めること」においてはじめて明け開かれる「透き間」とは何か。

自分のままでいることが、最も人々の為になる、という信念をもって、リレーに参加するうちにつくられる空間には、必ず、その「透き間」と呼ぶべきものが現れる。

「透き間」とは、つまり、完成しないがゆえに、常に誰かに次の行動を促し、発展していくのではなく、変遷していく。

イソノミアの下にある限り、永遠に。

001@gridframe • 2016年12月31日


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