店舗という歴史をつくる
どのようなプロジェクトにも「歴史をつくる」という側面があるのだ。
双方がそれを自覚しているか否か、が一体感のカギになる。
・・・・・・・・・・
いつも人は、一緒にいる人の鏡だ。
だから、ある人に会うとその周囲にいる人たちのことも分かる。
ぼくがごく親しい人と一緒にいるとする。二人の意見が分かれて、お互いに自分の意見を主張した後、表面上、もの別れに終わったにもかかわらず、二人の意見がそっくり入れ替わっていることに気づくことがある。
ぼくたちは、一人でいたとしても、周囲の人を連れて歩いているようなものなのだ。
だから、大きな決断をしてプロジェクトを進めるとき、「誰と一緒に進めるか」はいちばん大事なファクターだと思う。
ぼくたちは空間をデザインする仕事のなかで、クライアントの強い思いに動かされて、自分たちの普段の力以上の力を発揮できたことが何度もある。
同時に、ぼくたちの姿勢やアイディアがクライアントの構想に影響を与えて、初期構想段階とは別次元の魅力的なお店が実現するのを何度も見たことがある。
お互いのエネルギーの高さが、お互いを高めあい、プロジェクト全体のエネルギーが高まっていくのだ。
そのようなプロセスで進む店舗空間づくりは、もちろん単なるビジネスでは片付けられない。
クライアントもぼくたちも、自分の人生を賭けて「このプロジェクト」に立ち向かっていることが大前提としてある。
大げさに聞こえてしまうかもしれないが、どのようなプロジェクトにも「歴史をつくる」という側面があるのだ。
双方がそれを自覚しているか否か、が一体感のカギになる。