darts mokomoko
コンセプトは、「paradise」
戦争は果てしなく続いていた。
国境の広大な原生林では、もう戦闘はすっかり日常的なものになり、皆、死を賭けているという感覚すら失っているようにも見えた。
それもそのはずで、ぼくら兵士たちが生まれた年には、すでに戦争は始まっていたのだ。平和な時代を知らないぼくらには、戦争は食べて寝ることと少しも変わらない。
隣国の人間は鬼畜だと教わった。だが、ぼくらにはインターネットがあって、隣国にもぼくらと同じような喜びや悲しみがあることを知っていた。ぼくらは馬鹿じゃない。そんなふうに教える人間たちこそ鬼畜だと思っていた。
それでも戦闘では、相手を殺さねばならなかった。ぼくは引き金を引く時には、決して相手の顔を見ないようにした。そして、これがゲームであることを祈り、眼を閉じた。そう、いつもと同じだ。
だが、今日はいつもと同じではなかった。眼を閉じた瞬間、胸に衝撃を感じ、ぼくは地面に仰向けに倒れた。ようやくぼくの番が来たのだ、と思った。
ぼくは死んだのだろうか?ぼんやりとなにかが見えた。死んだ後も、ぼくらは夢をみるのだろうか?
ぼくは先程、ぼくの前でドサッという音とともにうつ伏せに崩れ落ちた男とダーツを興じていた。森に墜落した輸送機の中なのだと思う。きっと何十年も前に墜落したのだろう。錆びて朽ちた穴が拡がって、つる植物が光とともに室内に侵入して繁茂していた。音もなく静かだ。ダーツが的に刺さる音だけが微かに反響する。きっと誰もたどり着けない森の奥深くにいるのだ。
その男を撃つ前に、ぼくは顔を見ていないので、その輪郭はぼんやりしている。彼の1本目はブルの1センチほど左に突き刺さった。11ポイントだ。まずまずの腕前なのか、偶然なのか。彼は軽く舌打ちをして、2本目を投げた。今度はアウターブル内の左上部だった。25ポイント。彼は上級者だ、と確信した。彼は満足げに、ぼくの方を見て笑った。3本目は明らかに20のトリプルリングを狙ったものと思える。これもやや左に外して、5のトリプルリングに突き刺さった。彼は、声を立てて笑った。
そして、やわらかい声で、「君の番だ」と言った。
ぼくは微笑んで、ようやくぼくの番が来たのだ、と思った。
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