コーヒー
ある特定の食べ物に関して、これがなかったら生きていけない、と思ったことはない。
おいしいものは気持ちに豊かさを与えてくれるが、おいしさを問題とすることは、ぼくにとっては贅沢の部類に属していて、食べ物はもっぱら健康の問題に関係していると考える方がすっきりする。
だから嗜好品と呼ばれるものに執着を持つことはほとんどない。コーヒーだけを例外として。
ぼくが子供の頃はネスカフェが席巻していたコーヒー市場。ネスカフェをお湯に溶かして、「クリープを入れないコーヒーなんて」とつぶやきながら飲んでいた。
コーヒー豆を買って、ミルで挽いてサイフォンで入れること自体を愉しむようになった大学時代。豆の種類を覚えて、好きな豆を買うこと、そして、それを友人にふるまうことがうれしかった。
スタバを代表格として、カフェはおしゃれな位置を保持しているが、いろんな豆を置いて、マスターがこだわりの入れ方でさりげなく出してくれる喫茶店は数を減らした。
喫茶店はカフェとは違う。ぼくは既存のどちらの空間にも少し違和を感じている。たぶん、その空間は、ぼくらの生き方と深く関係している。
そんなことを考えさせるコーヒーとは面白いものだな、と思う。
→自社ファクトリーでつくる店舗デザイン空間/グリッドフレーム