日本から海外への贈り物
森林での生活は、多種多様な生命との共存であり、外なる生命の力は脅威であるとともに、物質的恵みであり、知の根源である
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日本から海外へ配信したい、店舗デザイン・建築・プロダクト・モノはありますか? という問いに答えて・・・
元来、日本独自の文化は、氷河期から温暖な気候への変化とともに現れた、豊かな森林での生活に始まっていると思われます。縄文時代と呼ばれる、一万年以上に亘る森林中心の生活の後、水耕栽培の始まりで平野中心に住むようになってから、まだ3000年です。
森林での生活は、多種多様な生命との共存であり、外なる生命の力は脅威であるとともに、物質的恵みであり、知の根源である、という関係性が脈々と続いてきたのでしょう。私たちが「自然」と呼ぶとき、イメージするのは、外なる生命の宝庫としての森林の姿ではないでしょうか。
その森林の中で、自然のままに暮らすことへの憧れは、ずっと日本人の中に生き続けているような気がします。だから、日本の建築は、障子というやわらかい紙が内と外の境をなすようにつくられ、障子を開け放つと内から見る外は、まるで柱と梁によってフレーミングされた絵のように見えるようにつくられました。内にいても、主役は外であるかのように。
また、構築的なものに対する反感も日本の文化の特徴だと思いますが、これもこうした外なる生命との共存から来るものだと思います。下剋上の時代に始まった茶道の「侘び寂び」は、明らかに構築的であることとは逆のベクトルを美しいものとして尊ぶコンセプトです。利休の茶室は、つくられるごとにどんどん精神性を高めていき、そのまま行けば自然そのものにたどり着いたのではないか、と思われます。
森林の生活から遠ざかった私たちが、現代では失ってしまった力というものも少なからず存在したかもしれません。私たちが取り戻さなければならない価値のあるものが、そこにはあるような気がしています。
きっと、その大切なものの価値は、日本だけに必要とされているものではないでしょう。世界に向けて配信したいものは、外なる生命と通じ合うための日本的な手法ではないでしょうか。