GF001のコンセプトノート

店舗内装デザインを手がけるグリッドフレーム001の視点

映画 花々の過失

2009年。フランス・日本。

フォーク歌手・友川カズキドキュメンタリー映画。

深夜3時に目が覚めたときに観るにはちょうどよかったかもしれない。フランス人監督が、かっこよく撮る友川カズキ。絶叫する歌が、水彩画に溶け込むように、よい具合に薄められて、飲みやすい薬のようだ。

友川カズキの本当の得体の知れなさはたぶんこんな映像では伝わっていないだろう。だが、本当が伝わるような映画がどこにあるというのだ。

彼の歌がバックに流れる東京の姿は、2009年に撮られたものには見えない。ざらざらとした画面だからか。1970年代くらいのそれに見える。

いや、街は変わったようにぼくが思っているだけで、実は変わっていないのかもしれない。それとも、外国人にとっての日本のイメージが変わっていないのか。

友川カズキは「今の日本なんて大嫌いだ」という。多くの表現者が敵を見失っている中、60歳になっても新しい歌をつくり続け、絶叫している彼の特異性はそこに根ざしているのかもしれない。

けれど、そんなことどうでもいいような、エネルギーの塊の強さをぼくはこの映画に求めていたはずだ。でも、それを重量感をもって感じ取ることはできなかった。

彼の周囲の人々のコメントは、まったく必要なかったといっていい。彼は海外で評価されている、というが、日本語を訳した詩がどんな力を持つのだろう?そして、日本にいてもエキセントリックな秋田訛りを外国人がどのように受け止めるのだろう?

このフランス人監督には、友川カズキを撮る動機が十分になかったのではないか?

日本は同じ構図で、国内の大切なものを創造する人を選ぶときに、なんとなくアートらしきものを成立させてくれる有名外国人を選び続けている。東京オリンピックのメインスタジアムもそうだろう。

なにもかもが水彩画に溶け込むように、よい具合に薄められる。

 

自社ファクトリーでつくる店舗デザイン空間/グリッドフレーム

店舗内装デザインを素材とヒトにこだわって/マテリアルス

 

001@gridframe • 2013年11月13日


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