うらぶれた場所
当然のことだが、新しいビルと古いビルとでは、同じスケルトンでも醸し出す空気が全く違う。
古いビルのスケルトンは、現在までの空間の歴史を引きずっている。ぼくに霊感があるわけではないが、過去からの声がたくさん折り重なって聞こえてくるような気がする空間も多い。
一見、うらぶれた空間にしか見えない空間と対峙するのは、エネルギーを要する。だが、そこへ新しい生命を吹き込むことがぼくたちの仕事だ。
20歳でアフリカや東南アジアなどを旅した頃は、泊まる場所がどんなにうらぶれた空間でも全く気にならなかった。
アフリカのリゾート地で出会った40代と見られるリゾートホテルに泊まっている日本人は、かつては自分もそんな旅をしていたが、もういやだな、と言われた。
今はぼくが40代になって、自分はどうだろう?と考える。高級ホテルに泊まるのはもちろん嫌いではないが、だからといって、うらぶれた空間の安宿に泊まることになんの抵抗もない。
少し安心する。ぼくは変わっていない。
だが、そのような空間と対峙するのにはエネルギーを要する。そのエネルギーを失わずに、ずっと生きていきたい。
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